野木町・「煉瓦窯」


野木町・「煉瓦窯」



風薫るこの季節。とは言っても気温は27度を超える暑さの中、ラムサール条約登録湿地である渡良瀬湧水地に隣接する野木町煉瓦窯を訪ねた。先日、NHKで取り上げられて話題になったおかげか平日にも関わらず訪問者は多いと感じられた。 さて、この煉瓦窯は、ドイツ人フリードリヒ=ホフマンが19世紀半ばに開発し特許を得た赤煉瓦焼成用の輪窯。16室の窯を順次循環移動しながら各工程を連続的に行い、これにより赤煉瓦を大量に生産することができたと言われている。通常1室約1万4千個全室で約22万個が焼成可能であったというから驚きである。焼く温度は1千度で16室を23日かけて一周したそうだ。

隣には野木町交流センター・野木ホフマン館があり、煉瓦窯と歴史や渡良瀬湧水地と自然の展示室が設けられていた。煉瓦窯周辺を一回りして写真を撮り、これらの展示を見て帰ろうかと考えていたが、ボランティアガイドによる解説付きの見学に参加することにした。 

窯内に入ると薄暗く少々不安になったが、強固に補強がなされている事がわかり安心した。かつてここでは、窯詰め→焼成→冷却→窯出しの工程が行われていた。大量生産するため、レンガは天井までうず高く積まれ、まさにそれは職人だけがなせる技術だったそうだ(写真)。 窯上部(2階)の投炭孔から粉炭が投入され2窯ずつ火を絶やさぬようレンガを焼成した(写真)。これらの工程を行うため輪窯となっていたが、現存するのは野木町煉瓦窯だけであるとガイドが誇らしげに語っていた。また、東京駅の赤レンガもここで製造され運びこまれたとの仮説もあるようだ。

明治26年から80年余り稼働したこの煉瓦窯は、1979年に国の重要文化財に指定されている。

記・2016年5月