外科・肛門科

家庭でできる「やけど」の応急処置腸ポリープと大腸癌痔のはなし
大腸内視鏡検査の実際



家庭でできる「やけど」の応急処置

外来にくる「やけど」患者のパターンは大体決まっています。幼児がポットなど熱湯の入った容器を倒して負ったやけど、天ぷら油がはねて主婦がやけどをする場合、工 場でとけた金属がはねたり、不用意に流れたりした場合、またお年寄り湯たんぽやあんかで寝ている間に受けたやけどなどです。あとの方の二つは深部まで通っていることが多いようです。

応急処置としては、先ず水で冷やすこと。露出した部分がであれば、水で濡らしたタオルで冷やし、下着などで覆われていてぬがしにくい場合は水道水をホースでか けたり、容器に汲んでかけてりすると良いと思います。ぬがしにくい下着などは無理にぬがすと皮膚がむけてしまいますので、水をかけてやり、あとはそのまま病院 に行くか、どうしてもぬがせたい場合はハサミで着ているものを切り開いて下さい。そして冷水湿布しながら、病院へ運んで下さい。

軟膏をつける場合は、刺激の少ないものがよく、ごく軽い場合のほかは湿疹用のステロイド系のものは使わない方が良いでしょう。やけどは感染をおこすと治りが 悪くなりますので、やけどの部位を清潔に保つことです。ドクダミの葉を貼ったり、ジャガイモをすっての湿布などは感心しません。また、やけどの範囲が広い場合、 体表面積の10分の1以上のときは、あとで重いショックになる可能性が出てくるので注意が必要です。

やけどの程度はふつう次の3つに分類します。第一度は赤くなっているだけのもの。第二度は水疱形成。水疱はなるべくそっとしておき、つぶれて水が出たとき でも皮をむかないことそして、第三度は深部までやられているもの、ないしはこげているもの。第二度までは、殆どあとが残りませんが、第三度で広範囲のものは 皮膚移植が必要になることがあります。

何はともあれ「ころばぬ先の杖」、やけどをしないよう気をつけることが肝心です。




腸ポリープと大腸癌

きのこの形をして腸の内側に盛り上がった膨らみが、腸のポリープです。腸のポリープは、結腸や直腸に多くできます。小腸にできるのは稀と言えま しょう。胃のポリープは癌になることは稀なのですが、腸のポリープは癌になる率が高いので、注意して下さい。

腸のポリープは、腸に送られてきた食物の内容物による刺激によって、または腸の内容物を送り出す腸の運動によって、血が出やすくなります。いわ ゆる下血と言って、便に血が混じって出ることがあります。腹の痛みが起こってくることもあります。小さな腸のポリープでは、潜血反応と言って便を 特別に検査することによって、血が出ていることがわかることもあります。

小腸のポリープは少ないのですが、これも大きくなると腸が詰まる病気になったり、出血することがあります。大腸のポリープは、初めは何の症状もあり ませんが、次第に大きくなって出血しやすく、粘液の混じった血便を出したりします。癌と一緒になって存在することもあります。

話を大腸癌に移しますと、よくできるところは、直腸と言って肛門に近い 部分で、直腸癌は旺門からの出血が一番大事な症状です。直腸癌は、次第に 腫れ物のために直腸が狭まり、便が細くなったり、嫌な臭いの分泌物が便と 共に出るようになります。直腸のほかに結腸にも癌はできますが、腹痛が最も多い症状です。大腸癌によって、便秘と下痢が交互に繰り返し起こること があります。癌のできる場所と程度によっていろんな症状が出てきます。

疑わしい症状があったら、直腸鏡や大腸ファイバースコープの検査や、その部分を取って組織を調べてもらいましょう。ポリープは残しておかずに切 り取ると良いでしょう。

直腸癌は、手術で良くなる率の高い癌なので、発見されたら手術を受けることです。予防のために、暴飲暴食や刺激物を止め、便秘をしないようにし ましょう。アルコールは程々に。




痔のはなし

私たちが食べる食物は、食道・胃・小腸を通過して、消化吸収されながら大腸に至り、直腸・肛門から排泄されます。最近になって食生活の改善など生活様式の 変化にともない、下部消化管である大腸肛門疾患の増加傾向が指摘されるようになっています。

ところが、直腸肛門は毎日使う場所ながら、羞恥心のために病院の診察を受けないでしまうことがあります。自分で解決しようとして、かえって病気を悪化させ ることにもなりかねません。恥ずかしがらず早めに病院をたずねて下さい。

それでは、大腸肛門疾患にはどのようなものがあるのでしょうか?

何といっても多いものは『痔核』『裂肛』『痔ろう』です。肛門の三大疾患といっても良い位です。肛門周囲のそう痒症も多いものです。もちろん『大腸がん』も忘 れてはならない疾患です。

さて、直腸肛門疾患として最も多いのが『痔核』ですが、これは俗にいう“いぼ痔”とも呼ばれています。ひどくなると肛門の粘膜ごと一部外側に脱出してきて、いわ ゆる脱肛状態になり、こうなると手術が必要です。静脈血の循環障害が原因です。

『裂肛』は、“きれ痔”とも呼ばれ、便秘などで肛門の大きさ以上の便を無理に排出する時にできます。いってみれば肛門の外傷です。

『痔ろう』は、肛門周囲の皮膚に穴があいて、そこから膿が出てくるものです。細菌の侵入によっておこる感染症というべきものです。

肛門を汚れたままにしておくと、ただれてかゆくなってきます。肛門そう痒症です。

大腸がんになると、なかなか自分で判断を下すのは困難です。

肛門は毎日使うところです。排便の時によく注意してさえいれば、自分でもある程度診断がつきますので、これからはよく気をつけて排便するよう心がけて下さい。




大腸内視鏡検査の実際

西暦2000年には、大腸癌による死亡は男性が3位、女性は1位になると予測されています。この様な大腸癌の最も確実な診断方法は、大腸の内視鏡検査でしょう。

大腸癌は早期のものは小さな豆状のポリープという状態から進行するものがかなり多いものです。従って、早めにポリープないしポリープの中に発生している癌が 小さいうちに、大腸の内視鏡検査で発見して切りとってしまえば、お腹を開けて大腸を切除するという大きな手術は必要ありません。

大腸の内視鏡検査は、痛くてつらいものと考えている方が多いでしょうが、それ程苦しい検査ではありません。

検査方法を大まかに説明しますと、検査前日は、消化の良い食べ物にします。検査当日の朝は絶食して、検査4時間前に『ニクレック』という粉ぐすりを水2000ccに 溶かして、1〜2時間かけて飲みます。この薬を飲むのは、検査の前に腸の中をきれいに洗うためです。

2000ccもの水ぐすりなどとても飲めないと思うでしょうが、体の成分に近い液体ですから、自分で味をっけたりして時間をかけて飲むと、割合いスムーズに飲める ものです。薄緑色の透明な排泄液が出てくる様になれば、その時点でもう検査は可能です。

大腸は人それぞれ長さや曲がり具合が違いますので、内視鏡を全部入れるには20分から30分位時間がかかりますが、熟練したドクターであれば割合 いスムーズに検査が終了しますので心配はいりません。一度大腸内視鏡検査を受けて、大腸に異常が無いかを確認しておくと安心でしょう。