小児科

子どものかぜ子どもの発熱解熱剤はなるべく使わない
子どもの頭のケガ子どもが何かを飲み込んだとき
小児成人病子どもの包茎小児の「めまい」と「たちくらみ」
子どもの尿に血が出たら



子どものかぜ

かぜといってもいろいろありますね。鼻水だけのかぜ、咳や熱のでるかぜ。これはかぜの症状をおこす原因がいろいろで、一部はアレルギーや細菌の感染でもおこりますが、殆ど が、いろいろなウイルスの感染でおこるのと、感染をうける側の子どもさんの抵抗力や体質の違いで症状が違ってくるからだと思います。

現在、かぜ症状をおこすウイルスは150種類も見つけられていますが、例えば大人や年長児では鼻水だけしかおこさないカゼのウイルスが、赤ちゃんにうつると肺炎をおこしや すいものがあります。

また、インフルエンザは健康な幼児や学童がかかっても、生命にかかわるというようなことはまずありませんが、赤ちゃんにうつると重い症状となることがあります。

私達医師が、「かぜでしょう」と申し上げるのは、麻疹とか水ぼうそうとか診断をつけるためのはっきりした所見がなくて、鼻や喉とかの上気道に軽い炎症がある時に「かぜ」とし て経過をみようというときなのです。

喉をみて「かぜ」と書いてある訳ではありませんから、「かぜ」と申し上げてから、2〜3日して麻疹や川崎病であることもよくあります。

ですから、「かぜ」といわれても熱が続くとか、軽快しない時には続けて診察を受けなければいけません。

今のところウイルスに効く薬はありませんから、殆どのかぜには特効薬はありません。効く薬がないのですから、注射をすれば早く治るなんていうのはナンセンスです。ただ子ども の場合は熱が続くと脱水症状をおこしますので、水分を充分に与えなければいけません。




子どもの発熱

小さい子どもの突然の発熱は、若いお母さま方にはたいへん心配なことと思います。

夜間、休日救急診療所を訪れる患者さんの大多数が子どもの患者さんであり、しかも重病でない急性上気道炎といっても鼻腔、咽頭、喉頭にわたる炎症、すなわち「かぜ」なのです。

なぜ、子どもはかぜぐらいで発熱することが多いのかといいますと、かぜに何回かかって、かぜの病原ウイルスに対する免疫体をもっている大人と違って、子どもは免疫体をもって いないこと、一方、体内に侵入しようとするウイルスに対し、戦い排除する役割を持っている白血球も“戦闘力”がまだ弱いことから、最後の手段として“火焔放射器”による高熱で 敵の“戦闘力”を弱め、“撲滅”するというメカニズムを発熱現象は持っているのです。

つまり、、かぜを治すために熱は出ているのです。このことを我が国の医者があまり強調して言えなかった事情があります。それというのは、昔は、冬は肺炎、夏は疫痢という死 亡率の非常に高い恐ろしい病気がありましたし、我が国の子どもは今のように魚、肉類の動物性蛋白質を充分に取れなかったので、栄養不良であったため、体の抵抗力がありま せんでした。ですから、発熱というと怖い病気を治すために出ているのだというようなことは言えなかったのです。

ところで、発熱の中には重病のはじまりのときも時にはあります。その見分け方は、第一には生後1か月未満の赤ちゃんで、この頃はめったに発熱することはない時ですから、必 ず小児科専門の医師に診てもらわなければなりません。

第二には、顔色が目立って青白くなった時です。

第三には、名前を呼んでも振り向かない、すなわち意識混濁している時です。このような時は夜中でも遠慮せずに救急車を呼んで救命センターへ連れていってもらうことが必要です。

ようするに、ただ高熱だけで機嫌、元気のよい時はあわてずに、子どもの状態を観察することです。




解熱剤はなるべく使わない

子どもの発熱は、防衛反応であることはすでにお話し致しました。

しかし、医者はよく解熱剤を患者さんに出します。それはすぐ使うためではなく、万が一夜になって高熱が出て苦しいとか、頭がとても痛むとか、 眠れないという時に、止むを得ず使うこともあるかもしれないと考えて出しているのです。

よくお母さま方は、体温が何度の時に使うのですかとお尋ねになります。医者によっては、38 度以上とか、38度5分以上とか、薬の袋に書いている先生もいますが、それは高熱を我慢で きるか否かの個人差があって、なるべく我慢できれば、かぜの場合は使わない方がよいので す。子どもは案外と熱に強く、はたで考えている程苦しくはないようです。

では解熱剤を与えないで何もしないでよいのかというと、他にしなければならないことがたく さんあるのです。

まず第1には、母親がオロオロした心配そうな姿を子どもに見せないことです。第2には、母 親がそばについていてあげて、安静保温を守らせてあげることです。第3には、かぜの初め はとかく吐きやすいので、水分の補給はグラスでゴクンとは飲ませずに、茶さじで湯冷まし類 をゆっくりと与えます。第4に、依然として高熱が続く時は、後頭部をあまり氷を入れない水枕 でソフトに冷やします。第5には、下痢をしていなければアイスクリーム、シャーベットを少量 与えるのも、親のあたたかい愛情が伝わって熱を忘れさせます。

とかく我が国は薬にたよりすぎますが、これからは薬よりも物理療法とか心の看護がもっと もっと子どもには考えられなければなりません。

解熱剤は絶対にいけないというのではなく、解熱剤を与える前にしなければならないことが あるということを考えて頂きたいのです。




皆さんよくご存知のとおり、咳は日常よく見られる症状のひとつです。どなたでも経験され、またいろいろな咳をお聞きになっているものと思います。

この咳というのは、からだの外から入ってきたほこり、あるいはまた細菌などによって生じた気管支内の痰などを、外に押し出そうとしておこる生理的な防御反射なのです。ですから咳 をおこしている原因や程度を確かめて、これに対処していく必要があるのです。

咳は、実にさまざまな原因によっておこります。その大部分は、私たちの空気の通る道すじ、すなわち、鼻や口を通って肺に達するまでの気道といわれる部分に、病気がおこって生じる ことが多いのです。しかし、この他気管内の異物や時には心臓の病気が悪くなっておこることもあるのです。

また咳は、よく聞いてみると、いくつかの種類に分かれていることがわかります。しばしば聞かれるのは、痰やゼロゼロを伴わない「コンコン」といった乾いた咳で、俗に「から咳」といわ れているもので、普通のカゼの時に聞かれるものです。その他、はしかや気管支炎、気管支喘息でみられる「痰のからんだ咳」、それから特に夜間、発作性にコンコンコンコンと続けざま に息つぎなしに咳き込んで、最後にヒューという音をたてて大きく息を吸い込む「百日咳の咳」、それにもう一つ、犬の遠吠えのような太い咳のみられる仮性クループという、耳慣れない病気 の時に聞かれる咳などがあります。

このように咳ひとつ取ってみても、実にさまざまな原因によっておこってくるのです。




子どもの頭のケガ

小児がよちよち歩きを始める満1才ごろからは、思いがけない事故に出合うことがあります。頭のケガはそれらの代表です。

転倒や落下など何らかの原因で頭部を打ったときには、まず冷静にどのあたりを何にぶつけたか、何メートルくらい落下したか、意識はあるか、すぐ に元気よく大声で泣いているか、頭以外に外傷はないか、などを観察します。数分以内に意識が回復しない場合や出血がひどいときには、呼吸が楽にでき るようにし、救急車を呼びます。その場合は、むやみに移動させたり、抱きあげるのはかえって危険です。

外出血もなく意識も正常で、すぐに普通通りに遊び出したときにはまず安心です。しかし、吐き気や不機嫌など、多少とも疑わしい症状があれば医師 の診察を受けるのが賢明です。

医師の診察の結果でさらに詳しい検査の指示があれば、従って下さい。医師からまず「大丈夫です」と言われたときには一安心ですが、時には一見と るに足りない外傷でも、数時間或いは2〜3日後に症状が出る場合があります。ですから数日は慎重な観察が必要です。特に最初の夜は少なくとも意識 が正常か、寝ていても刺激で目が覚めるか、脈拍数が著しく低下していないかなどを確認しましょう。

慢性の「硬膜下血腫」を生じている場合はケガをした後、数日あるいは数週間後に頭痛、嘔吐、傾眠、歩行障害、半身麻棒、けいれんなどがあらわれます。

何事も予防が大切です。小児の身の回りの環境整備など、周囲の人々全員で守ってあげましょう。




子どもが何かを飲み込んだとき

小児の異物の誤飲は3歳以下に多いのですが、もし何かを飲み込んだ時の対応についてお話しましょう。

まず、異物が気管から肺に向かって入った場合についてです。何を飲み込んだかを調べると、最も多いものはピーナッツなどの豆類で、 次いで硬貨、玩具、ボタン、碁石、パチンコ玉、釘、餅、肉片、ボタン電池などです。

症状は、激しい咳、ゼロゼロとした呼吸音、呼吸困難、声がれ、最悪の場合は窒息することもあります。異物が気管内にとどまると、一時、症状は軽くなりますが、豆類などが長 くとどまっていると膨脹してますます狭まって肺炎などをおこすことがあります。

治療は、早期に専門医を受診し、異物を摘出することです。放置したり、様子を見ていたりしてはいけません。いったん軽くなったかに見えても、異 物の移動で窒息する危険があるからです。

次に誤飲によって、中毒症状をおこすものについてです。最も多いのはタバコの誤飲で、他に各種薬剤、防虫殺虫剤、水銀、灯油、 化粧品、乾燥剤、農薬などがあります。タバコの誤飲は一般的に量が少なく、胃の中でニコチンの溶け出すのが遅 いため、中毒がおこるのはまれです。しかし水のしみこんだタバコは、すでにニコチンが溶け出しており、中毒症状をおこしやすいので注意が必要です。

まず、口の中に残っている異物を取り除き、飲んでから4時間以内で意識が明らかな場合は、水や牛乳を飲ませ、喉を刺激して吐かせて下さい。 できるだけ早く胃の洗浄の可能な医療機関を受診して下さい。ただし、強い酸やアルカリ、灯油の場合は、吐かせたり胃洗浄は行いません。

緊急時に詳しい対応を聞きたい場合は、「中毒センター」にお問い合わせ下さい。




小児成人病

成人病といわれる癌、心臓病、脳卒中は、日常生活、環境、食生活の注意によって、ある程度は予防できるといわれています。

最近、子供が成人病と同じような病態を持っていることが見られるようになりました。小児成人病は、成人になってから症状が現れ、その起源は小児 期にあると考えられる疾患で、しかも成人の死因として主要な位置を占めるものです。その代表的なものは、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などです。 小児成人病を引き起こす最大の要因は肥満です。したがって、小児成人病を予防するには、肥満を防止することが不可欠です。

肥満かどうかを判断するには、一般的には標準体重比があり、現在体重から標準体重を引き、その差を標準体重で割って100をかけると得られ、20%以上が肥満ということに なります。20%以上30%未満が軽度肥満、30%以上50%未満が中等度肥満、50%以上が高度肥満と判定されます。肥満傾向児はこの20年間で2〜3倍に増加し、全児童の4%〜9%に伸びています。

子供の食事は、朝食の取り方が少く、インスタント食品とスナック菓子が多く、ファーストフードを食べるためカロリーが多く、動物性脂肪を取り過ぎることになります。また、ペットボトル症候群といわれるように、コーラ、 ジュース類の糖分の多い水分を1日に何本も飲んでいるうちに、それがなくてはならない生活になってしまい、肥満を助長させるようになります。 肥満になると、それに伴って、高脂血症、糖尿病、高血圧が見られるようになります。

小児成人病を予防するためには、カロリーを取り過ぎないこと、砂糖や塩分は1日10g以下にすること、食物繊維を多く取ること、脂肪は1日の必要カロリーの25%以下にすること、偏食をしないこと、よく体を動かすこ と、以上のことに注意しましょう。




子どもの包茎

包茎とは、亀頭が包皮におおわれたまま露出していない状態をいい、俗に「皮かぶり」と呼ばれています。

皮めくりが全くできていない完全包茎、つまり「真性包茎」と、単に皮が余っているだけで亀頭露出が簡単にできる「仮性包茎」の2種類があります。

子ども、特に乳幼児は皮をかぶっているのが普通で、これ自体全く病的なものではありません。思春期になってオチンチンが発育してくると、亀頭は自然に露出してきます。

しかし、完全包茎であれば、包皮の先端がリング状に狭くなっています。そのため、排尿するとき、一端オチンチンの先がぷく一つとふくれて、その 先から糸を引くような細い尿が出てきます。極端な場合、排尿障害や尿路感染の原因となります。

普通、3才くらいまでに包皮が発育し、狭いところも余裕が生じて完全包茎でなくなります。しかし、4〜5才になっても完全包茎であれば手術をするほうがよいでしょう。

また、仮性包茎でも不潔にしていれば、包皮内に垢がたまり、亀頭包皮炎を繰り返したりします。そのような場合、オチンチンの先が真っ赤にほれて 痛がり、パンツに黄色いウミがつくようになります。あるいは、いったんめくれた包皮が元に戻らないために、はれ上がって強い痛みを伴うこともあります。このような状態では緊急の手術が必要となります。 お風呂に入ったときなどは、積極的にオチンチンを洗い、亀頭まで十分清潔にしておくことが大切です。

いわゆる美容外科の過剰な宣伝のために、包茎について誤った情報が氾濫しています。多感な思春期青年は、病的な完全包茎でもないのに自分が包茎 と悩み抜いていることがよくあります。もし包茎が疑われたら、早めに泌尿器科専門医に受診し、学童期までに解決しておくことが大切です。




小児の「めまい」と「たちくらみ」

めまいは、自分の身体や周囲の物が回るように感じたり、頭の中で物がフワフワ浮いているように感じたりするのですが、子どもの場合は、こうした 感覚を言い表せないことが多いのです。

ですから子どもの様子を見ていて、「突然母親や近くのものにしがみついて泣く」「ふらつきやすく落ち着きがない」「転びやすく外傷が多くなった」 などの症状がある場合には、めまいが起こっている可能性もあるのです。

めまいの原因として考えられるものを順にあげていきますと、まず中枢神経に関わるものでは「てんかん」、脳に関わるものでは「脳炎」「脳腫瘍」 「外傷」などが考えられます。

また、耳鼻科領域では「内耳炎」「突発難聴」「ヘルペス感染症」「前庭神経炎」「メニエール病」などが考えられますが、これらは10才以下では極め てまれです。眼科領域では「眼筋麻捧」「ブドウ膜炎」などが考えられます。全身症状のひとつとしてめまいが起こるものには、貧血を起こす血液疾患、 心臓の不整脈、高血圧、低血圧、また精神的、心因性めまいも考えられます。

また、小児期、特に思春期前後に最も多く見られる原因としては、起立性調節障害と呼ばれている一種の「自律神経失調症」があります。 この病気になると、立っていると気分が悪くて倒れる、入浴中や嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる、少し動くと動博や息切れが起きるなどの 症状があらわれて、一般に寝起きが悪く午前中は不調なことが特徴となっています。ただ、この病気は、「登校拒否症」「神経症」などとは区別されます。 軽症の子どもは他の子とかわりがほとんどありませんが、自律鍛練や生活改善で治ることがあります。

いずれにしろ、こうした症状がある場合は、医師の詳しい診察を受けて下さい。




子どもの尿に血が出たら

学校での定期検尿のほか、最近では幼稚園や保育園でも、更に3才児検診の時にも尿を調べるようになり、血尿や蛋白尿がみつかることがあります。

学校検尿で血尿のみられる率は1〜6%です。そのうち40%は血尿のほかに症状のない無症候性血尿で、血尿が1年異常続く広い意味での慢性腎炎 症候群は30%です。

ふだん腎臓は1/4ぐらいの働きで体を支えておりますので、その3/4が傷害されても日常生活に支障はきたさないと言われています。つまり病気 で腎臓の働きが半分以下になっても、症状がでるわけでもないのです。

進行の遅い慢性腎炎症候群では「むくみ」などの症状ができ、時には腎臓の力がほとんどなくなっていることもあります。どんな病気の時も同じですが、腎 臓病の治療でも大切なことは早期に発見して、病気が悪くなる前に治療を始めることです。幸いなことに、血尿や蛋白尿は病気が発症した早い時期に出 るので、検尿で腎臓の病気を早くみつけることができるのです。

血尿がみつかっても、ほとんどの場合そんなに心配はいりません。初めてみつけた時には血圧を測ったり、血液を調べたり、時にはレントゲン検査の 必要なこともありますが、それで異常がなければ、その後は定期的に尿を調べて、血尿や蛋白尿が強くならないか、経過をみていけばよいのですが、根 気よく通院することが大切です。

ごく稀に進行することもありますが、多くは数年以内に治ります。先生から特に指示がなければ、食事や運動を制限する必要はありません。