あいさつ

イントロダクション

手話を習い出して5年になります。最初は軽い気持ちで始めたのですが、現在では、地元の手話サークルに入り、週一回はろう者(聴覚障害者)の方と手話で話しています。(手話はろう者の言語ですから、手で話すのです)

ろう者と話していて第一に驚かされたのは、ろう者の表情が豊かなことでした。表情が手話だけで伝わりにくい面を補充する役目を担っているからなのですが、私は音声言語に頼りすぎて、患者と対面した時などに表情が乏しかったことだろうと反省しました。

また、手話を学ぶことはろう者を知ることです。

今まで日本の法律では、耳が聞こえない人や目が見えない人などは医師・歯科医師・看護師等の資格免許を受けられませんでした。しかし、昨年から国家資格の欠格条項の改正がすすめられ、ろう者の薬剤師が誕生しています。

今後、ろう者の看護師が、また、ろう者の歯科衛生士がスタッフとして入ってくるかも知れません。そして日本もアメリカの様に、ろう者の医師・歯科医師が開業できる環境が整うことも、そう遠くないでしょう。 ノーマライゼーションの掛け声と共に障害を持っている人々と生活する時代が始まっています。障害者のことを知らない人はノーマライゼーションの波には乗れません

サークルメンバーのろう者が私の診療所に治療に来たとき、手話で問診をし、レントゲンの説明をし、治療内容を説明すると、そのろう者から「治療の説明を受けたのは初めてだ。今までは何も分らず金だけ払っていた・・・。」と言われました。私も手話を知らなかったら、説明を省いてしまったはずです。

反対に、女性のろう者に「うちの診療所は手話を使っているから、是非いらっしゃい」と言うと、「私は昔からかかりつけの歯医者がありますから、これからもそこに行きます」と言われました。彼女はその先生の口話(口の形を読む) は慣れているので分るし、先生も必要なことは筆談してくれるそうです。一所懸命にコミュニケーションした結果、患者との信頼関係を築いた先輩歯科医師に頭が下がる思いがしました。

手話というツールを得るためではなくて、皆さんがろう者に一歩歩み出すきっかけを提供できればいいのですが・・・。





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