もし先生の診察室に聴覚障害者(以下、ろう者)が来院したら、どうしますか?
まずは、『あいさつ』をする時の(『こんにちは』の手話表現の写真参照)をしてみましょう。ろう者は先生のあいさつに安心感を持つことでしょう。
次に、診療の時どのようなコミュニケーション方法があるかですが、@筆談A口話B手話C手話通訳、などがあげられます。今回と次回はこれらのコ
ミュニケーション方法を説明致します。
@筆談による方法
お互いに紙に書く・読むことですから、比較的容易な方法ですが、結構時間がかかります。また、年配のろう者の中には日本語文が苦手な方もいますので、
ろう者の文章が理解しにくいこともあります。一方、医学用語のようにあまり一般的でない単語は文字に書くほうがスムースに通じることもあります。
また、例えば「〇月×日13:00〜△検査をします」という約束事などは紙に書いて渡すことで、後で確認してもらえてよいでしょう。
A口話による方法
「痛い」などの単語でしたら、口を大きく開けてはっきりと話しかけてみてください。ろう者は先生の口の動きから何を言っているのか理解できるでしょう。
その時に重要なのは、単語にあった表情をする事です。「痛い」と言っているのに顔が笑っていては混乱させるだけです。「痛い」表情が作れますか?もちろん、
歯科の先生はマスクを外して話しかけてください。
口話は一単語からはじめて、短い文章をゆっくり話してみてください。難点は似た口形の場合は誤って伝わることもある点です(例・『卵』と『タバコ』
は口形が似ている)。
B手話による方法
手話でコミュニケーションが取れれば、短時間にたくさんの情報をやり取りできます。ただし、これから手話を覚えるには時間と意欲が必要です。
私の場合、はじめて1年ほどはろう者に話しが通じている実感が持てず、スムースにいったケースでも、ろう者から「この先生は手話が分かるんだ」と
思われて手話をまくし立てられ、私が読み取れずに、「もっとゆっくり、もっとゆっくり」とお願いしていました。手話技術に自信がない内は、ろう者に
理解した内容を反復してもらうことが必要です。
ただし、手話は年齢・性格・地域により違いがあります。また、形として残りませんので、後で確認が必要な内容には適さない面もあります。そこまで
理解されて医師がコミュニケーションを取れば、ろう者は安心して受診できます。
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