LESSON14

聴障の患者を知ろう@・・・受付時

患者のバックボーンを知るチャンスは大きく分けて三つあります。

@受付で行われる聞き取り・問診票記入の時
A医師による診察時
B薬局での服薬指導の時

今回は@「聞き取り・問診票の記入の時」についてです。これが大変有効であることはご存知の通りです。聴障者への対応事例としては、聴障者・通訳者・医師会とが共同で作成した千葉県の問診表作りの実践レポートなどがあります。 聴力の項目や伝達方法(口話・手話・筆談等)があるのが特徴的です。しかし、多くの医療機関がこの問診表を十分活用するに至りませんでした。実際に手話による伝達を希望されても、大多数の医療機関では対応が困難からだと思われます。

そこで現在使用している各医療機関の問診票を少し改善できないものかと考えてみました。

一つ目は、単語の意味が理解されているかどうかです。私の歯科医院で開院時に作った問診票を例にだすと、「該当する」・「歯周病」・「アレルギー体質」・「副作用」などは理解されないかもしれません。「歯周病」はコマーシャルでも 使われていてもう一般に理解されていると思われるでしょうが、そう思えるのは繰り返し耳から音声情報が聞こえているからです。

ですから「歯周病」にはルビをふり、「歯ぐきが腫れる・歯ぐきから血がでる・歯がぐらぐら動く・息がくさい…など」と注釈を加えると効果的です。

二つ目は、医療にかかった経験のあるろう者が意外と少ないということ。背景には家族とのコミュニケーションが取れなかった人も少なくなく、病院に行くのは他見で判断できる場合が多かったようです。病歴などを尋ねても何も書かないのは、 病気の名前を知らなかったり、病院にかかったことがないからかもしれません。自分の症状を病名に結び付けるには聞こえない患者への情報保障が不可欠ですし、患者を育てる観点からも大切なことです。

そして、聴障者の医療従事者はまだ少ないこと、手話の通じる医療機関はそう多くないことなどを考えると、聴障者にとって医療は決して身近なものではないと感じます。従って、チェックや記入のない項目にも気を配ることが大切です。

三つ目は、聴障者は文章を書くのを得意とする人が少ないこと。同じく書くのであれば、相手から「今日はどうしてこの医院に来たのですか?どこか痛いのですか?」と短い文章でやりとりする筆談で問われたほうが答え易いようです。問診 の方法の工夫ということになりますが、是非時間をかけて聴障者の気持を汲み取ってください。







ワンポイントレッスン
「検査結果をお話しします」の手話表現
検査
@「検査」・・・人差指と中指を
第2関節から曲げて、目の前
で左右に動かす。(左右の目の
動きを表現して、物事の真相を
見抜こうとしている様子

結果結果
AB「結果」・・・親指と人差指を付け合わせた両手でひもを結ぶ
仕草をする。(“結ぶ”を“結果”の“結”にあてている)

話す
C「話す(説明する)」・・・掌を左側
に向けた右手の小指側の先で、
左手の掌を2度ほど叩く。(左手
の資料を指し示しながら相手に
説明している様子)


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