LESSON22

手話は万国共通か

私が「手話はいいですよ、離れていても相手が見えれば会話できます。」と言うと、「手話って便利ですね。外国でも通じるのですか?」という 質問を受けました。なるほど、サインランゲージなのだから、共通点は多いでしょう。しかし、答えは「NO」です。手話の多くが身の回りの仕草 や風習などから出てきていますから、生活習慣や文化の異なる場合、手話も異なります。

例えば、日本では畳の上に正座して箸を持って食事します。欧米ではナイフ・フォークで食事します。つまり、「座る」・「食べる」(「食事」) という手話表現も同様に違ってきます。しかし、相手の生活習慣などがわかっていれば理解ができます。これが手話はノン・バーバル(非言語的) コミュニケーションの要素が多いという所以です。

一方で、日本では1920年代後半より口話(こうわ)教育が広がります。口話教育は、意思伝達を手話に頼らず発声によるコミュニケーションを 目的としているので、往々にして手話を禁止してきました。その結果、若い聴覚障害者(ろう者)の間では、日本語文法に手話単語を対応させた 手話が多く見られます。手話が記号化されてきて、事前の知識がないと見た目では何の意味か判断できない手話が増えてきています。これは先の ノン・バーバルコミュニケーションがなかなか成立しにくくなってきている面です。それに対し、伝統的な見た目で判断できる手話を大切にしよう という動きも出てきています。

以前、アメリカを旅行したろう者の本に、「ホストファミリーとすぐにコミュニケーションができた」と書いてありました。実際に多くのろう者 が言語の壁をこえて海外旅行で人々とのふれあいを楽しんでいると聞きます。中学校から大学まで英語を習っても海外でおどおどする自分を省みて、 手話の偉大さを感じます。そしてノン・バーバルな感性をもっと磨いて、ろう者と接する時、患者と接する時、海外に出かけた時に、役立てられれ ばと思っています。






「食事の時間です」
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