診察室で役立つ手話27
LESSON26

見てとらえられない障害・難聴編@

聴覚障害といっても、完全に聴力がない状態(ろう)から残存聴力が残っている状態(難聴)までがあり多様である。外見からは体に不自由があるようには見えない点は共通だが、 難聴者はろう者と違って、音域によってこちらの声を聞き取ったり、話し言葉が流暢であったりして、音声による会話が成立することも多い。耳にかけている補聴器から聴 覚障害者かな?と判断できるが、接していてもさほどの支障を感じない。難聴者の場合、ほとんどが手話を用いないので、集団の中にあっては難聴者がいることには気づかない。

買い物の際も、会計をするにはレジに表示されたお金を支払えば健聴者と何ら変わりはない。ところが、店員が「お箸入れますか?」「温めますか?」など と突然問いかけるとコミュニケーションが取れないことがある。それでも勘のいい難聴者は店員のちょっとした動作から何を言っているのか想像して首を縦に振 ったり横に振ったりして応じる。しかし実際には、店員が顔を正面に向けて、大きな口を開けて話してくるわけではないので、難聴者が声かけに気づかずレ ジを通過してから「お客さん、お客さん!」と呼ばれ、周りからは不審な視線を投げかけられ恥ずかしい思いしたという経験も聞く。

レストランでウエイターに確認で注文を復唱されても判断できない。「はい」とうなずいて、全く違ったものが出てきてがっかりすることもある。その点、 ろう者の場合には喋れないので、メニューを直接指差しして注文することで確実に注文を行い、また、結果的に店員には聞こえない人であることを理解される。

時には聴力の障害で人間関係が壊れることもある。エレベーターでドア付近にいて、乗り込んできた人に「○階を押してください」と言われても聞こえない。 近所の方とすれ違いざまに声をかけられても聞こえず、無視したと思われてしまう。職場では、キチンとしゃべれるのだから、電話対応もできると判断されて 電話当番をまかされるケースもある。実際に電話を利用する難聴者もいるが、聞きやすい音域・単語もあり、正確に伝えるにはファクシミリがむいている。 また、補聴器の特徴として、音はわかるけれど、方向がわかりにくいというのもある。聞こえないことを「聞いてない」と思われることが苦しいと洩らす難聴 者も多い。

一方、小さい頃から小中学校の難聴学級に通っていいた人たちは、読話も訓練されているので、正面に立って、少しゆっくりに口形をはっきりと動かせば、 内容が伝わる。基本的な意思の疎通の方法を理解されないまま、一括りに「聞こえない」と特別扱いされてしまうと孤独に追い込まれてしまう。







ワンポイントレッスン
「検査の時は補聴器を外してください」の手話表現
検査時
@「検査」・・・人差し指と、中指を第二関節から曲げて、目の前で左右に動かす。(左右の目の動きを表現していて物事の真相を見抜こうとしている様子) A「時」・・・右手の親指を左の掌の中心部にあて、右手人差し指を前方に回転させる。(右手の人差し指は時計の針の回転を表している)

補聴器を外す頼む
B「補聴器を外す」・・・人差し指を緩やかに曲げて他4指を握った右手を補聴器に見立て、耳の後方から耳たぶに乗せてある右手人差し指を耳から外す。(耳にかかっている補聴器を外す様子)
C「頼む」・・・掌を左側に向けた状態の右手を額の前に立て、その後前方に出す。この時に頭を軽く下げる。(相手に対して、頼む!と頭を下げるときの手の動きを表している)



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