LESSON28

目ではとらえにくい障害・難聴編A

人間誰しも加齢に伴い聴力が落ちるものである。その聴力低下が時間をかけて緩やかな場合、本人も気付きにくいし、ショックも少ない。

逆に突発性難聴の場合は、人によっては前兆があるケースもあるが、突然聞こえなくなり、大きなショックを受ける。病院に行っても原因がはっきり せず、不安や戸惑いを抱く。

耳鼻科に絞るならば、生まれつき、もしくは言語獲得期以前に失聴したろうあ者は身体障害者手帳申請のために受診するくらいだが、難聴者の 場合は、原因究明・治療・リハビリ・メインテナンスなど、耳鼻科との関わりは深い。近年は、人工内耳を使い、ある程度聴力を取り戻せるように なるケースもあり、難聴者の以前のように聞こえるようになりたいという願いは、ろうあ者よりも強いし期待も大きい。

しかし、聞こえないことについての悩みや聞こえるようになりたいという願いについて理解ある人は非常に少ない。一番辛いのは、周囲の何気ない 言葉である。「聞こえない」「聞こえる」といった言葉で深く傷つくこともある。"好きで聞こえなくなったんじゃない""聞こえない苦しみをどうして わかってくれないの?"と口にはしなくとも葛藤の嵐が胸の中に吹き荒れる。

そんな難聴者たちが、心おきなく胸の内を明かして話せるであろう場がある。同じような難聴者達の集まりである「中途失聴者・難聴者協会」。 各都道府県に1団体は存在し、同じ障害や悩みを持つ仲間を支え合う。

そして、彼らの医療に対する関心も非常に高い。来る10月8日(金)〜11日(月)に東京において「第11回全国中途失聴者・難聴者福祉大会 in Tokyo」が開催され、全国から多くの仲間が集う。医療に関する講座も3つある。「再生医療」の講座では、「難聴治療における再生医療の必要性」 「内耳再生医療研究の現状と問題点」、「内耳再生医療の近未来」の3部構成で、内耳医療と最先端の現状・その倫理的問題について講演。「人工内耳の 普及」の講座では、「人工内耳のリハビリの実際について」の講演。「聴覚障害者が従事する医療の現場〜さらに見えてきた問題は〜」の講座では 、欠格条項を見直した法律の改正後、聴覚障害者に医療職場は拓かれたのか?また、職場環境は改善されたのか?についての討議。医師と患者とい う個の関係のみではなく、医療関係者と利用者・関係者とが連携して大きな信頼関係を築いていく。

行政では、ややもすると「ろうあ者」と「難聴者」を「聴覚障害者」として一括りにする傾向があるが、異なる傷害であり、抱える悩みや課題も 大きく異なっていることを知った上で、私たち医療従事者も現場において接していきたいものである。






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