LESSON31

大規模災害時の医療支援@

過日の台風23号による災害および新潟県中越地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

さて、私が所属する全国手話通訳問題研究会は昭和49年に結成され、今や全国一万人の会員を擁する団体に成長しました。名称からややもすると手話通訳者集団のように誤解されがちですが、手話通訳者だけの集団ではなく、聴覚障害者と手話に関わるすべての人々を会員とした幅広い組織の実現を目指しています。

そして、医師、看護師、保育士等、手話とは直接関係ないが聴覚障害者問題を考えている人が専門集団としていくつかの組織を編成しています。 その一つに「聴障・医ネット」があります。「聴覚障害者の医療に関心をもつ医療関係者のネットワーク」の略称ですが、阪神大震災の折りに、被災者である聴覚障害者と直接対話のできる医療をめざして医療団を編成し現地入りしたことがきっかけです。 阪神大震災後も大規模災害時には要請に応じて現地支援に入ることができるよう常に事務局で薬を管理し、ネットワークを運営維持してきました。

今回の新潟県中越地震に際しては、全体的に被災直後の初期対応が素早く、県内においても医療団が編成されて多くの医療関係者が既に現地支援に関わってきています。それに対して「聴障・医ネット」では、中長期的視点で、その後の対応、すなわち精神面のフォローや過労への対応を中心に支援を検討してきました。

この度、12月22日〜23日の2日間、聴覚障害者団体の全国対策本部の「視察」があり、要請を受けて「聴障・医ネット」のスタッフも同行することになりました。栃木からも看護師1名が参加する予定です。その視察結果については機会があれば報告させていただきたいと思います。

医療支援に障害の有無は関係ありません。しかし、種々の障害の状況を配慮することで適切な対応が求められます。聴覚障害者への医療支援にあっては、特に筆談が困難で手話を主たるコミュニケーション手段としている人の場合には、手話通訳を介してどれだけインフォームドコンセントが実現できるかがポイントになります。

これまでにもお話しさせていただきましたが、通常の診察より数倍の時間をかけることも必要になり、日頃から意識的に訓練をしていないと、いざというときに実践できないというのが実状だろうと思います。 もし、先生方の中で、新潟県中越地震への医療支援や「聴障・医ネット」に関心をお持ちの方がいらっしゃればご連絡をお待ちしています。栃木の中にも「聴障・医ネット」の輪を広げたいと思っています。






ワンポイントレッスン
「部屋のご希望は?」の手話表現
部屋部屋
@A「部屋」・・・@掌を向かい合わせた両手を左右に離して置き、
A次に掌を手前に向けた両手を前後に離して置く。(四方を壁に
囲まれている、あるいは空間を四角に仕切っている様子)

申し込まれる「ある」+「〜か?」
B「申し込まれる」・・・左手の掌の
中心を右手の人差指で押さえて
手前に引き寄せる。(相手側より
書類などを自分の方に突きつ
けてきた様子)
C「ある」+「〜か?」・・・掌を下
に向けた右手を胸の前で軽く下
に置く(「ある」の手話表現)。
次に、眉を上げながら首を右に
傾ける(「問いかけ」の疑問詞に
なる)。


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