LESSON32

大規模災害時の医療支援A

昨年十月に発生した新潟中越地震に深い関心を寄せている先生が多くいらっしゃることと思います。しかし、現地入りしたくても身動きがとれずに実際に救済活動やボランティアに参加できる人は少ないのではないでしょうか?

聴覚障害者の医療に関心を持つ医療関係者のネットワーク(以下「聴障・医ネット」)は阪神淡路大震災をきっかけに組織化された経緯があり、今回の震災にも早い段階からチームを組み、聴覚障害者の被災後の健康対策に取り組んでいました。2004年12月23日に栃木県から参加した看護師の大島三千子さん(県登録手話通訳)に現状と活動内容を聞きましたのでご報告いたします。

『今回新潟県中越地震に被災した地域の聴覚障害者を対象に、健康状態の把握を目的として北魚沼郡湯之谷村大湯の温泉宿泊施設に行きました。新潟県聴覚障害者復興対策本部の調べによると、被災した聴覚障害者は小千谷市26人・十日町23人・長岡市140人の199人です。11月15日の段階で小千市谷6人・十日町4人・長岡市2人が避難所で生活していました。その後帰宅できる人もあり、25日には小千谷市3人・長岡市2人(うち1人は12月8日に仮設住宅へ)となりました。

今回の相談会には小千谷市14人・十日町12人・長岡市25人が参加しました。周辺は前日からの初雪が20〜50cm積っていました。はじめに手話のできる医師が「インフルエンザ」をクイズ形式にして説明しました。インフルエンザの予防接種の実施は行政から情報があったと思うのですが、聴覚障害者には伝わっていませんでした。

小千谷市と十日町は手話通訳者がいないので県からの派遣となります。遠くから通訳者を頼むので、受診時の手話通訳利用は消極的です。しかし、地震発生後、現地からは「手話通訳者を派遣して欲しい」という切実な要望が聞かれました。

その後、入浴に時間や空き時間を利用して健康相談を行いました。地震直後は入院した人もいたようですが、今回の参加者には大きな外傷はありませんでした。たくさんのろう者が色々な相談や質問にみえました。皆さん大なり小なり筋肉痛を感じているようで、準備した湿布が無くなりました。

病状は地震後発症のものも、地震前から継続しているものも共にありました。しかし、医師に直接相談でき、手話通訳者を介して必要な情報を得ることで不安が軽減できたように見受けられました。

新潟には「がんばれ新潟」という趣旨の標語があちこちに貼ってありますが、被災者はその通りに頑張り過ぎていると感じました。疲れている自分に気がつかないまま、気力で頑張って疲労を蓄積しているように見えました。

今後何か災害があったときは、行ける医療関係者には現地へ行っていただきたいと思います。できることはたくさんあります。もし無理でもボランティア派遣のためのカンパ・医薬品の寄付などの協力を是非お願いします。』






ワンポイントレッスン
「診断書は有料です」の手話表現
診察紙
@「診察」・・・右手の人差指と中
指を軽く曲げて、左手の甲を2度
ほど叩く。(医師が患者を触診
する仕草)

A「紙」・・・両手人差指で上から
下へ四角を描く。
お金をもらう必要
B「お金をもらう」・・・掌を上に
向けた左手を腹の前に、右手
の人差指と親指で作った輪を
胸の前方に置き、左手を前に
出すのと同時に右手を手前に
引く。(左手で相手に品物を渡
して、右手でお金を頂く仕草)
C「必要」・・・掌を上に向けた両
手を胸の前に置き、指先を2度
前後させる。(自分の前に必要
な物を引き寄せる仕草)


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