LESSON34

福祉の原点を学ぶ

先日、東京盲ろう友の会の講演会に参加してきました。

講師は東大先端技術研究センターの福島智助教授です。彼は視覚と聴覚の二重障害である盲ろう者です。 私はNHKの番組で震災時の障害者への対応を彼が説いているのを見たことがあったのですが、そのすぐ傍で通訳者がお互いの手を通して同時通訳しているのに大変驚き、是非お会いしたい、お話を聞きたいと、かねてより思っていました。

福島さんは、小学生4年生の時に全盲になり、高校生(18歳)で完全に聴力を失いました。 ご自身の発声で講演をしますが、視覚・聴覚の情報は全て指点字により得ています。指点字とは福島さんのお母様が考案したもので、福島さんの指の上に点字をタイピングする方法で情報を伝達します。

盲ろう者と一言で言っても、聴覚障害者が視覚障害を持った(デフベース)のか、視覚障害者が聴力障害を持った(ブラインドベース)のか、その経過によって通訳方法が異なります。

デフベースの場合、手話を習得していれば「触手話」(しょうくしゅわ・対面で手を取り合って手話をする方法)が中心です。一方、ブラインドベースの場合、点字を習得していれば「指点字」(ゆびてんじ)や直接紙に打たれた点字を読み取る方法です。 講演後の質疑応答では私たちが笑うのと同時に福島さんも笑っていました。指点字での情報保障がスピーディーでリアルタイムであったためです。

講演の中での印象的なお話をひとつ書きます。「健常者が我々の目標ではない。もし、健常者を目標に置くならば、健常者は完全なものでなくてはならない。しかし、健常者もいろいろ不完全なものを持っている。盲ろう者である私の障害を野球に例えるならば、グラウンドの条件が悪いだけだ。中身が大切だと思っている。野球を東京ドームでする人もいるし、原っぱの三角ベースでする人もいる。私にとっては三角ベースも楽しい。条件よりもその中でどんな風に生きるのか、どんな風に楽しむのか。仲間との心の触れ合いが人生を豊かにしてくれる・・・。」

講演を聞き、私は今まで障害者に対して「かわいそうだ」というレッテルを貼ってきたことに気づかされました。それは健常者の尺度でしか物事を考えていないとても一方的な価値観でした。

先のNHKの番組において、「震災等の緊急援助を考える際に、障害者への対応を想定しておけば、全ての人に対応できることになる」と福島さんが語っていました。

よりよい社会とは、障害者・健常者と区切る発想を乗り越えて創造していくことだと学びました。






ワンポイントレッスン
「薬を飲んで胸に発疹が出ました」の手話表現
薬飲む
@「薬」・・・左掌を右手の薬指
でこね回す。
(昔の薬の調合の仕草)
A「飲む」・・・左掌に出来上がっ
た薬をそのまま口に持って行く。
(コップの水を飲む仕草を続け
て行うと、より臨場感が出てくる)

赤かゆい
B「赤」・・・右手の人指し指で
下唇を示して右に引く。(「色」
は顔の特徴的な部位を指し示
して表現するものが多い)
C「かゆい」・・・胸元を痒くて掻
く仕草をする。(痒い部分で掻
く仕草をすると良い)


戻る