LESSON6

レントゲン撮影

 検診・診断の際にはレントゲン撮影を行います。

 今回は、聴覚障害者(ろう者)に対するときの「レントゲン撮影」場面について考えてみたいと思います。

@私(歯科医師)の経験から…
 私が手話を習いだした頃、あるろう者が診療にみえて一番喜ばれたのがレントゲン像の説明でした。 たどたどしい手話で「写真を見てください。黒く写っている所は柔らかい所です。白く写っている所は固い所です。 歯は固いので白くなっています。その白い歯に黒くあるのが虫歯です…」と説明したのです。 そのろう者はレントゲン像の説明を初めて聞いたとのことで、「今まではレントゲンは撮られるだけ、お金を払うだけだった」 と言っていました。一般にろう者は、首をタテに振るだけで何も言わない場合が多いために理解できたと思われて、 治療内容説明をしてもらえないことがあるようです。一方、自分の受けている治療について関心の薄いろう者もいますから、 漠然と「何か質問は?」と尋ねても思いつかないようです。

 つまり、患者の健康意識・自己管理意識を高めるためには、視覚で確認できる情報を多用するなど、私たち医療従事者から 積極的に関わっていくことが重要です。その場合、耳からの情報が足りない分を視覚からの情報で補います。その分、 多少時間がかかりますが、皆様には丁寧な説明を心掛けていただきたいと思います。

Aレントゲン撮影時の課題
 医療従事者・ろう者・手話通訳者が集う討論会でよく話題になる議題があります。「手話通訳者はレントゲン室に入る べきか、入らざるべきか」…勿論、要らぬ被曝はさせない方がいいでしょう。しかし、消化管バリウム検査のよう向きを 変えたり、「息を吸う・止める」の指示をしたりが音声でできないとしたら、どうされますか? 手話通訳者に入室 してもらいたくなるのではないでしょうか? 手話通訳者も医療機関に所属している職員(専従手話通訳者)であれば、 医療知識も十分あり被曝しないよう工夫できますが、専従手話通訳者が配置されている病院は全国的にも数件です。 手話通訳者はろう者が依頼して同行してくるので、医療には詳しい人ではないことも多く、その手話通訳者に入室 するかどうかを判断させるのはいかがなものでしょうか。現に通訳者がプロテクターを着用してレントゲン室内で 通訳しながら撮影が行われたという事例や、プロテクターを着用しなかった事例もあるようです。

Bレントゲン撮影時の工夫
 栃木県手話通訳問題研究会・医療班で「レントゲン撮影」について話し合った時、ろう者から次のような意見が 出されました。「レントゲン撮影の前にイラストを使った説明用ボードで説明を受けたので、問題なく撮影できた」 「一回受ければ次からは不安はない」「映像で見せてもらえば何をされるのか分かり易い」等々。

 総括すると、事前の説明で解決できることが多いようです。また、設備の面でも手話通訳者が被曝しない位置で 通訳できる工夫をしたり、ランプや鏡等を活用して直にろう者に指示したりすることが望ましいです。一方、こういった 論議は放射線に対する要らぬ不安を抱かせがちですが、安全であることを説明した上で、安心して撮影してもらうことも 医療従事者の責任です。






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