LESSON8

入院に伴う注意点A

 広島市では緊急・災害時の24時間手話通訳派遣制度を行っています。そのレポート発表の中で、 救急隊員が「泥酔した人をろう者だと勘違いしてしまった」という話がありました。この制度を 始めるに当たって、「聞こえないこと」の学習をしていなかったそうです。

 「入院」の話とは異なるとお思いでしょうが、果たして病院のスタッフは聴覚障害者(ろう者)の 「聞こえないこと」を理解できているでしょうか? 「聞こえないこと」は聴力による情報が入らない ことであり、病院内であれば、緊急時に患者の意識を確認する方法が一つ少なくなることでもあります。

 さて、ろう者が入院する事となったと仮定しましょう。入院前の説明は何に気をつけますか?  緊急時は、家族にはどのように連絡しますか? もし患者の家族が全員ろう者の場合は、耳の聞こえる 知り合いに連絡した方が良いでしょうか? それとも、ファックスしますか? Eメールの方が早いので 活用しますか? でも、コミュニケーションはどうやって取りますか? 手話のできる人に一緒に 来てもらいますか? それともこちらから通訳を頼みますか?

 どのような方法をとるにしても、患者自身の希望や、家族構成を配慮して選択したいものです。 そのため、ろう者が入院をする際には事前の打ち合わせを十分にしておく必要があります。

 そしてもう一つ大切なことは、ろう者について、医療スタッフが知識と情報の共有化を図っておく ことです。耳からの情報が伝わらないことを患者が移動しうる各所で周知しなければなりません。 病院での取り組みとして、ろう者であることを知らせる「耳マーク」があります。診察券やカルテに 貼ることで、一目で分かります。また、診察券やカルテを色分けしている病院もあります。蛇足で ありますが、視覚障害者に白い杖があるように、聴覚障害者には黄色い杖があります(残念ながら、 私は一度も使っているのを見たこともありませんし、また、県内でつかっているという話を聞いた事も ありません)。

 一方、緊急時のことや情報不足のことを取り立てて言えば、ろう者本人からプライバシーの点で 不満が出るかも知れません。色々な側面に配慮した、ホリスティック(全人的)で、インディビジュアル (個別的)な対応が求められています。不安で孤独な入院生活を支えるのは医療スタッフの一人一人 なのですから。
(協力…栃木県手話通訳問題研究会医療班)






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