あけましておめでとうございます。 年頭に当たり、新年の抱負を述べなくてはならないのですが、昨年は大きな出来事がたくさんありましたので、 それらのことごとを多少なりとも振り返っておくことも大切なことだと思います。 大きな出来事のひとつは、昨年8月の衆議院選挙で、自公政権は敗れ去り、脱官僚政治を標榜した民主党中心の政権が誕生しました。 協会の対応としましては、栃木県の民主党の代表は谷博之参議院議員でしたので、9月11日、同議員の事務所で会談し、保険医協会の考え方や 医療現場の実情などを伝えました。すなわち、自主共済規制が優良な協会・保団連の共済制度に影響が起きていること、歯科における保険診療費の あまりにも低い点数、医科における外来管理加算5分ルールの問題などです。 また、医療現場では、どのようにレセプトを作成しているのか、手書きレセプト、レセコン使用でも紙レセプトと、電子レセプトの違いなどを 図を交えて説明し、議員にもご理解を得ることができました。 昨年の『年頭所感』で、レセプトをオンラインで請求するのも、フロッピーディスクなど電子媒体で請求するのもデータ的には同じであり、 オンラインを義務化にする理由は無いと、書きました。この不合理な制度に対して、神奈川県保険医協会が中心となり、レセプトオンライン請求義務化 撤回を求めて、横浜地方裁判所に1月に提訴しました。当協会からも多くの会員が原告団加わり、9月9日に横浜地方裁判所において第1回目の裁判が 開廷されました。 そんななか、10月、厚労省はレセプトオンライン請求に関する省令の改正原案を提示して、パブリックコメントを求めてきましたが、 あいかわらず、例外を多く認めただけでオンライン請求義務化のままでした。これに対して、当協会は、新たな提言を担当大臣や政務官に提出しました。 そして12月、オンライン請求は義務ではなくなり、フロッピーやMOでの電子レセプトでよい、ということになりました。 昨年の訴訟の際に行われた、原告代理人である小賀坂徹弁護士の意見陳述を振り返ってみましょう。そこでは『オンライン請求完全義務化の真の目的』 として、次のことを指摘しています。 電子化されたデータの集積、分析による『標準的な医療』という基準を設けて、この基準からはずれる診療行為をオンラインで請求された段階で 支払い基金がはじくことが予想できます。これはオンラインでのみ可能であり、フロッピーなどで提出する電子レセプトでは、データの分析はできますが、 受け付ける前でのチェックはできません。それこそが、厚労省が『オンライン』にこだわった本音であったわけです。 さらにこの問題の重要な点は、2006年の『医療改革大綱』の[公的保険給付の内容・範囲の見直し等]に記されているように「オンライン請求の際にデ ータ分析が可能となるように取り組む」とされていることです。 従って、これから私たち保険診療に携わるものが注意しなくてはならないことは次のことです。レセプト入力時に、傷病名と医療行為を 一つひとつ対比させるというような、実際の診療になじまない、実に病気を機械の故障とみなすような制度を構築されないよう、厚労省の動向を 見守っていくことであろうと考えます。 歳末恒例の行事として、2009年の漢字に『新』、流行語大賞に『政権交代』が選ばれました。前の年の漢字は『変』でした。 思えば大変な時代の始まりでもあったわけですね。
ところで、そのときの流行語大賞をおぼえておいででしょうか。 |
栃木保険医新聞2010年新年号・年頭所感 |