魅惑の山スキー

鈴木宏彦(鹿沼市・鈴木クリーン歯科)


駒の小屋から見た燧ヶ岳 360°マイゲレンデ

 大方、人は誰でも、本職とは別の趣味を持っている。私の場合はここ10年、 「山スキー」(バックカントリー)にはまっている。

 それまでいろいろなスポーツをやってきた。卓球、スケート、野球、 器械体操、スキー、テニス、ゴルフ、パラグライダー、ダイビング、水泳、 マラソン……等々、そのほとんどは中途半端に終わったが、山スキーだけは 残りの人生を懸けることができる趣味として的が絞られた。年老いて歩けなく なるまで続きそうである。

 昔はゲレンデで滑っていたが、マンネリ化してきた頃、山スキーと出会った。 それは、ある人の「ゴルフにたとえるなら、ゲレンデスキーは練習場の打ちっぱなし、 山スキーは本物のコースプレイかな……」という言葉からだった。この言葉に ショックを受けて始めた山スキーだったが、案の定、雄大な自然の中に羽ばたいて、 チャレンジ精神が湧きあがる面白さをみつけた。


大戸沢の深雪は裏切らない。
2010年2月、斜面一面、表層がなだれた。

 山スキーは単純で、人の手が加えられていない自然の雪山を、ただ山頂まで登り、 そして一本、降りてくるだけである。この単純さの中に、すぐに飽きてしまって 物足りなく感じられた人工ゲレンデのスキーとは異なる、手つかずの自然を相手にする バリエーションとスリルが山スキーにはあって、堪らないのである。

 山スキーの一番の醍醐味は、腰まで埋まってしまうほどの深雪・極上パウダーの 中で“宇宙遊泳”を堪能できることである。その次に、春山スキーの爽快さがある。 天気がよいと空気の透明度も高く、大パノラマ鑑賞のツアー気分を味わいながら、 “シャーベット”上に自分だけのシュプールを描くのがまた堪らない。

 滑っているときは笑いが止まらないし、降りてきた後々まで、しばらくの間、 興奮が覚めやらない。しかも、下山後の温泉三昧と民宿の料理で“極楽気分”を 満喫できる。


テントを張って一安心。
御神楽沢は5月の連休でも外の木は凍ってしまう。時々吹雪にも遭遇する。

 南会津の山々が私のフィールドであり、12月から翌年の5月いっぱいまでの 約半年間、滑ることができる。私は檜枝岐の民宿「御宿郷」を基地にして活動して いるが、山菜、きのこ、鹿肉、イノシシ、イワナ、サンショウウオや数々の珍しい 郷土料理(東京で値段をつけるなら2万円を超えると思うが……)と温泉入り放題などの 種々の特典がついて、1泊2食付で8000円と格安である。山スキーなのでリフト代は 当然かからないから、他にかかる費用はガソリン代だけである。

 週1〜2回は必ず登るので、1シーズン換算で優に30日を超えるほど山スキーを 楽しんでいる。シーズン到来! 興味のある方は声を掛けてみてください。

鈴木宏彦が運営するプライベート写真館 「本音でトーク」
栃木保険医新聞2011年新年号・投稿