2012年 年頭所感

会長・戸村光宏



2012年をむかえるにあたり、昨年を振り返り、またこの新しい年に向かう私たち保険医協会の役割、 運動などについて、思うことを書きたいと思います。

昨年は、東日本大震災による大きな被害に見舞われました。 地震、津波、放射能汚染という、どれもこれも近年日本人が経験したことの無い規模の大災害でした。 東北三県ばかりでなく栃木県も大きな被害を受けました。会員の被害も数多くあり、6件の医療機関が全半壊、 192件で一部損壊でした。被災されました会員の皆様には、心からお見舞いを申し上げます。 本県も被災県ではありましたが、事務局では宮城協会へ出向き、物資を届けるなどの救援活動をいたしました。 また数多くの会員から、保団連の救援金へ多額のご協力をいただきました。ありがとうございました。

被災された会員のうち全半壊された6医療機関と、建物に被害を受けられた96医療機関へ、保団連から支給されたお見舞金をお届けいたしました。 まだまだ修理ができていない医療機関もありまして、改めて地震の大きさに思いをいたしているところです。 被災されたにもかかわらず、「もっと大被害を受けた医療機関の再興にまわしてほしい」と、 お見舞いを辞退された先生も数多くおられました。他の県でもそのような先生方が多くおられたようで、 おかげさまで全半壊の医療機関へ当初より多くのお見舞金を差し上げることができました。 あらためまして、お礼を申し上げます。

福島の原発事故はチェルノブイリに次ぐ大量の放射能を環境中に放出しました。 12月には、事故後4ヵ月で飯館村など三町村の個人の外部被曝量が平均1ミリシーベルトを超えている解析結果が、 福島県から発表されました。最高に被曝した住民は37ミリシーベルトに達していることがわかりました。 この地がこれから後、震災前のように人が住み暮らしていけるようになるにはどのくらいの歳月がかかるのかと考えてしまいます。

福島の原発は栃木県にも近く、本県の北半分の空間放射線量も1年で1ミリシーベルトを超えてしまいます。 これら地域は放射能汚染に対する特別措置法に基づき、政府が国の責任で除染するレベルになっています。 かなり広範囲になると思われるこのレベルの地域すべてに、放射能除染に対する生物学的な必要性が どのくらいあるのかはわかっていません。低レベルの放射能が人体に与える影響はさまざまな説があり、 一医療人としても、どう対処したらいいのかわからないことだらけです。

そのようなわけで、去る11月「原発・放射能問題勉強会」 を当協会に発足いたしました。今後の勉強の予定は「原発について知識を深める」 「放射能について、特に100ミリシーベルト以下の被曝について諸説を検討する」 「放射線量測定器を持っている会員の協力を得て、医療機関周辺地域の線量をモニターする」などを計画していますので、 ご協力をお願いします。原発内部や解体される様子を記録したドイツのドキュメンタリー映画「アンダー・コントロール」が、 とちぎ福祉プラザで1月29日に上映されます。協会主催ではありませんが、ぜひご覧ください。

昨年は、計画停電などの影響で複数の講習会が延期になり、9月以後に集中してしまいました。 12月にも「レセプト記載の留意点」「歯科・電子化請求下における審査、指導対策」が行われました。 窮屈な日程になり、会員の先生方にはご迷惑をおかけいたしましたが、今年も、医科歯科合同の団体としての利点を生かしたさまざまな 勉強会や講習会を企画いたしておりますので、ふるってご参加のほどお願いいたします。

今年は診療報酬点数が改定されます。協会としても、適正な診療報酬の引き上げと、 患者負担の軽減を要求しておりますが、どのような改定になるのか注目しているところです。 いつものように新点数検討会を、保団連のわかりやすいテキストを使って3月20日過ぎに行う予定ですが、 たぶん医療機関にとってはきびしい改定になるにちがいありません。政府は震災復興と財源不足を盾に、 税と社会保障の一体改革が必要として「全世代型」をうたう案を検討しています。たぶん国民負担は増加し国の負担は減少するという流れになっていることでしょう。 遠からず消費税は上げられ、それに伴って医療機関の経営は厳しくなることは必然です。本年こそ医療に 関するゼロ税率導入にむけ大きな運動を起こさないといけない年であると考えます。

栃木保険医新聞2012年新年号・年頭所感