夏のカナディアンロッキー・トレッキング2

斎藤芳国(宇都宮市)


コバルト・レイク(標高2444m)孫とともに

昨年8月10日から19日まで、一昨年と同じバガブーとボビーバーンズの2箇所のロッジに宿泊し、6日間トレッキングしました。 今回は初めて経験したロッククライミングと氷河トレッキングについて昨年と同様にこの誌面に書かせていただきます。

ロッククライミングはヘルメットとハーネスを身に着けた後、岩の斜面にある足底の横幅より狭い道を岩壁につかまりながらトラバースし、 深い谷にかかったつり橋を渡り、さらに高い角度の岩場をクライミングしました。岩場には足をかける金具がしっかりと打ち込んであり、 ハーネスを接続するワイヤーも張ってあり安全にクライミングできました。


高く長いつり橋を渡る(標高2620m)

しかし垂直に岩場を登るときは腕力がかなり必要で特にハーネスを付け替えるときは片腕で体を支えなければならず、 毎日腕立て伏せと腹筋トレーニングをやっていてよかったと痛感しました。 一歩一歩慎重に5時間かけ500 m高度を上げ、2700 mの頂上に到達しました。そこからは360度パノラマが開け、氷河をもつ山々が一望できました。 下山は慎重に岩場を下り最後は高さ100 mの岩壁をレスキュー隊のごとくロープ一本で宙づりになり一気に降りました。 これも初めての経験でしたが両足で岩壁を蹴りながらスムーズに降りることができ、ガイドから「パーフェクト」とお誉めの言葉をいただきました。


氷河のクレパスの間を歩く(標高2500m)

カナダでトレッキングを始めてからずっと「氷河の上を歩きたい」と思い続けていましたが、ついに念願がかなって最終日にそれが実現しました。 ヘリから氷河の上に降り立ち周囲を見渡すとそこはこれまで見たことのない異様な世界でした。 冷たい空間のなかに氷面が青みを帯びたクレパスが大きな口を開いていて、その中をのぞくと数mくらいの深さまで壁が確認できましたが、 それより下は真っ暗で底の様子は全くわかりませんでした。氷河の上やクレパスの開口部には上流から移動してきた多くの大小の岩塊がのっかっていて、 一戸建て住宅の大きさのものもありました。ピッケルをもち、アイゼンをつけ、一人一人をロープでつなぎ氷河トレッキングが始まりました。 気温4℃のなか、クレパスに注意しながら一歩一歩3時間かけ高度を500 m上げ氷河の頂上(標高2700m)に到達しました。 氷面の足場は悪く歩きづらく、気圧が低いせいか息苦しく感じました。しかし大きなクレパスを近くでじっくり見ながら初めて氷河の上を歩けたことにとても感動し、 満足感と達成感が得られました。実はこの間に2回ひどく転倒し、手掌に擦過傷(4cm大)ができ、かなり痛みを覚えました。 いずれも写真を撮っていて遅れてしまい、急いで歩いたためで、「クレパスの近くでなくてよかった。」と胸を撫で下ろしました。 もちろん帰ってから妻にひどく叱られました。

今回危険な場面がありましたが大きな事故に至らず無事達成できました。 「これは2月に還暦を迎え、2月3日京都天龍寺にて豆まきをさせていただき、厄払いができたおかげかな」と思いましたが、 しかし一つ一つ場面を振り返り反省し次のトレッキングに備えたいと考えております。暴走する還暦男にならないように。

本年も8月7日出発します。

コンラッド氷河からの激流を渡る(標高1750m)コンラッド・グレーシア(標高1920m)
栃木保険医新聞2013年新春号・投稿