カナディアンロッキー・トレッキング3

斎藤芳国(宇都宮市)


バオー氷河 2000年の末端部

昨年8月8日から14日までバンフの南西200q、パーセル山脈にあるバガブーとボビー・バーンズの2箇所のロッジに宿泊し、 6日間トレッキングしました。これらのロッジに平成22年より毎年訪れ今回が4度目でした。 一昨年、昨年とトレッキングについてこの誌面に書かせていただきましたが今回はバガブースで代表的なVowell(バオー)氷河を紹介させていただきます。

一昨年この氷河の末端部を訪れました。この場所へ行くには徒歩でグリズリー・ベアーが出没する道を1000m登り、 谷を下りその後も登り下りを繰り返しながら10時間かかる道のりをヘリに乗り10分で運んでもらいました。

氷河の末端部は氷河が掘り下げてできた 池(ラグーン)があり、その中に氷河から融けはがれた大きな氷の塊がたくさん浮かんでいました。氷河の末端部へ向かって歩いていくと、 西暦2000年から毎年氷河の末端部の位置を年ごとに示した札が立てられており、氷河の退縮(後退)がかなりのスピードで進行していることが わかりました(ガイドの説明では年間10m)。またこの末端部では10年前まで氷河が厚くしっかりしていて氷河ハイキングが行われていたとのこと。 地球の温暖化でどんどん氷河がなくなっていることを痛感しました。


バオー氷河のラグーン

この氷河の上流・源流はどうなっているのかぜひ行きたいと思っていたところ、今回この希望が叶いました。 もちろんこの場所へ歩いていくことは全く不可能で、ヘリで運んでもらいました。

ヘリから降り立つと目の前にこの地域で有名な高い山々に囲まれた広い氷原が広がり、その中に氷河の塊が浮いた氷河湖があり、 これまでに見たことのない感動的な光景でありました。氷河の中央付近には山から落ちて氷河の上に堆積したたくさんの岩石が下流に向かって帯状に存在しており、 氷河が絶えず下流に向かって動いていることを示しておりました(速度は年間10m)。

ヘリから降り立ったあたりの氷河の厚さは90mくらいあり、 深いクレパスがないため、氷河の上を歩いて氷河湖の方へ移動しました。氷河湖の水は青みがかった乳白色で、その中に崩れた大小の氷河の塊が浮いており、 写真でみる北極南極の光景と似ていました。光景に感動し「このチャンスは二度とない」と考え湖面を観察すため湖岸ぎりぎりまで近づいて 夢中でシャッターをきっているとガイドに見つかり「さがるように」とお叱りを受けました。湖水の温度は0〜4℃ですから、 落ちたら15分前後で意識消失、その後心停止をきたしてしまいます。

雄大な光景を見ながらの6日間のトレッキングは無事終わり感動的でしたが、 バオー氷河において末端部の急速な退縮と上流部で融けてできた氷河湖を見ていると 、近い将来この氷河がこの場所から消滅してしまう寂しさと悲しさがこみ上げてきました。なんとかしてこの感動的な光景を後世に残してあげられないものかと。

バオー氷河の氷原バオー氷河の氷河湖
バオー氷河の上流バオー氷河の近くにあるコバルト湖
栃木保険医新聞2014年新春号・投稿